とある神官の話



  * * *



 ――――バルニエル。


 戦闘能力が高く、昔は傭兵として名を馳せた者も排出しているのがリムエルという者達である。
 流浪の民とも呼ばれ、移動して歩くものもいるが、ここ、森に器用に作られた街に定住しているのも少なくはない。




「凄いですね……」

「バルニエルは初めてですか」

「ええ。話しは聞いていましたが」




 森を巻き込むように作られた街というのは、珍しいだろう。昔からバルニエルはリムエルの土地であるが、現在はフィストラ聖国、教皇領となっている。

 列車から降りた先には、豊かな森。白と緑の光景が広がる。
 腰に刃や、背中に槍を背負ったリムエルもよく見かける。傭兵をしている者たちであろう。

 あまり見慣れない光景を見せる街故か、ゼノンが興味津々にあちこちを見ている。何だか子供みたいだなと横にいながら思った「あっ」
 私の視線に気がついたゼノンが照れたように笑う。



「ねえレオドーラ。何か出歩いている神官多くない?」

「多分幽鬼の件があるからだろうなー。バルニエルから離れた村で魔物が、とかがあったかも―――――あ、ロッシュ高位神官はいるか?」



 神官達がいる建物の入口。レオドーラは私の荷物を持ったまま小走りで向かう。番をしていた神官と何か話すと「はあ?」という声。
 それに同じく近くにいたハイネンが、「ぶふっ」と何故か吹き出す。



「どうかしたんですか」

「あーその、あれだ。魔王降臨というか……」

「降臨……?」





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