とある神官の話
私はゼノンの言葉を否定出来なかった。
初めて出会ってから考えれば、名前で呼ぶようになったし、話す回数も増えた。何故か。彼が私に抱いている"それ"を気づいていないわけでもない。
変化。確かに変化であろうか……。
「そ、そんなに私素っ気ない感じでしたか」
「―――まあ、私も私でしたが。あれだけ追い回していたら嫌にもなるでしょう。すみませんでした」
「いえ、私こそ……いろいろとごめんなさい」
あれ。
うっかり謝ってしまったが、よくよく考えると追いかけまわされて怒るのは普通ではないだろうか。どこからともなく姿を見せて、適当に話しをしたら姿を消す。
ゼノン・エルドレイスといったら、若いのに高位神官となり、かつこの先出世間違いない、とまで言われている男だ。稀少な"魔術師"という能力持ちで、かつはっとするような美形は、女の子達を騒がせるには十分だろう。
だから、彼が私を追いかけまわし始めた登場から、ファンクラブの女性らや、それ以外でもギロリと睨まれたりなんかしたし……大変だったのは間違いない「でも」
ゼノンが立ち止まる。
「私が、貴方を思う気持ちは本当です」
「!」
―――失敗だ。
言わせないようにしていたのを、言わせてしまった。これはもう、告白されているのと同じではないか。
見る見る熱が顔に集まる。
寒いはずなのに、暑い。
風邪をひいたみたいに。