とある神官の話







 ――――急に彼氏だなんて。
 自分で勝手に考えたが、何を馬鹿なと考えを振り払う。欲しいといったら欲しいが……って、何故ゼノンが出てくる!
 どうかしたか、とファーラントに言われ私は「なんでもない」と返す。





「でも何というか、さ」





 食後のコーヒーを飲みながら、クロイツが目を伏せる。




「元気そうでよかったよ。リリエフやら何やらのことを聞いた時は気懸かりでならなかったから」




 本当はあまり元気じゃないが。

 それはこの兄弟も、アーレンスも知っている。"事情"を知っているから。けれど変に気をつかわれても、私は困ってしまうだろう「それで」




「父さんとハイネンはどうするつもりなのか」

「幽鬼だろう?うーん。どちらもさっぱりだからなあ……ただ、シエナを呼び出したからにはシエナが関わるのだろうけど」

「うん、そうだよね」




 気が重い。平和に過ごしたい、など思う。少し前は平和だったのになと。まだゼノンに追いかけ回されている時はよかったが――――ああ、どうしてこうなったのか。知らないよそんなの!

 気分が沈む私は、外を見遣る。

 久しぶりのバルニエルであるが、何だか嫌な予感ばかりだな、と溜息をつく。






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