とある神官の話






「私はセラヴォルグが生きていれば、と今でも思います」



 アガレスが友とし、対等で、大切に思っていた人物。

 あの事件後の彼は、ひそやかに過ごした。シエナを娘とし、聖都から離れた。もっとも彼は聖都に居座ることのほうが少なかったが。
 セラヴォルグはアガレスを追わなかった。彼が激怒するほどの理由を知ったとしても彼は、相容れなかった。"あの"セラヴォルグが……。

 あのウェンドロウから傷を受けたシエナは、セラヴォルグから何かしら施されたこそ今がある。"施され"なければ、ウェンドロウが彼女に刻みつけた傷が、何かしら影響を及ぼしたのだろう。
 ―――だが、わからないこともある。何かしらの影響とは何なのか。




「嫌ですね、本当」




 ああ、と返したアーレンスが溜息まじりに頷く。



「悲しいことばかりだな」




  * * *


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