とある神官の話





 やあお嬢、と声がかけられたと思ったらそこにはモージおじさんがいて。



「そういや、、銀髪のイケメン兄ちゃんと歩いてたのを見かけたぞー」

「あー」



 間違いなくゼノンのことだろう。
 見られていたのか、と思う私をよそに「いいねぇ若いって」とモージおじさんが笑う。



「お嬢のこれか?」

「違います。彼はその、知り合いですよ知り合い」

「レオドーラも彼も必死か。うんうん若いねぇ」

「えっと……」




 鍛練場に行ってみるといいよ、と言われて私ははて、と思う。

 夜が明けた今日、まだ呼び出しもないためぶらぶらとしていたのだが……。鍛練場?レオドーラがいるのか。彼とは誰のことだろう。

 ――――第三者から見て。
 ゼノンが私に好意を持っているように見えるのか、だなんて今更ながら思えばやはり恥ずかしい。
 恋人同士が違いにひそひそとしているのをみるだけでも、羨ましいようなむず痒いような気持ちになるのに。ああもう!何故私なんだ。何故どうして。

 普通なら…。私の過去を知ったら、気持ち悪いとか思うはずで。昔から知ってたりするレオドーラや、ロッシュ兄弟とは違う、そしてアゼル先輩とも違う人―――。まるっきり接点が少なかった人が、あんな過去を知っても、私に好きやら口説くやら頑張るやら言うだなんて。




「いけー!」

「いいぞ!いけいけ」

「すげぇ。ロッシュ高位神官仕込みのレオドーラが押されてるぞ。何もんだ?」

「………」




 鍛練場には、変な熱気があった。
 バルニエルの神官らが「ありゃいてぇ」やら「新人じゃあ無理だな」やらぼやきつつ、野次を飛ばす。
 ちょっと通して、と言いながら鍛練場へ足を踏み入れれば――――。




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