とある神官の話





 術をかけ終えた私に「あー」とレオドーラが言う。




「便利だよな、お前の能力」

「まあね。でも格闘だとかは無理よ。だから頼りにしてる」




 照れた顔で「当たり前だっつーの」と言いながら配置につく。すぐ近くには私服の――――美女が立つ。ハイネンだ。女装しましょうかね、と手慣れ感を醸しだし出てきた彼は、本当に美女。男だけど!
 バルニエルの街の境目……術の効果がもっとも薄いところに私はいる。他はゼノンと、他の神官もいる。


 ――――それは、来た。


 悲鳴。悲鳴悲鳴悲鳴!
 ぐっと掴まれたような感覚と、腹の奥からの不快感。雪の中から出てきた、異形のもの。幽鬼だ。




「さて本番ですよ。いやん!こっち見たわっ」




 ハイネンが体をくねらせる。うわあこの人やっぱりいろいろと駄目だ、と私がより強力な防衛術を展開させておくと、ゆらりゆらりと揺れる。
 馬の荒い呼吸が白く消える。

 フードを纏ったそれは、こちらを見た。私も負けじと見てやれば――――『見、ツケタ!』という声。見つけた?何が。
 幽鬼は再び悲鳴。「シエナさん!」という声と、「さ、最悪だ」という声。その中でも「いやあ、人気者になった気分ですねえ」という奇人だけは殴りたい。

 一体だけではなかったのだ。
 バルニエルは豊かな自然に囲まれている。隠れやすいのは私たちだけではない。





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