とある神官の話
神官服のままで寄った孤児院はすでに夕飯の準備をしていた。出迎えたカイム達に引きずられながら入った室内は賑やかだった「なっ」
夕飯後は子供たちはそれぞれ部屋にいっているため、ここにいるのは私とブエナだけだ。
「それだけシエナのこと大切に思ってるんだねぇ」
「あーあー聞こえませんっ」
にやつくブエナに、突っ伏す私。
ある程度の今まであった出来事を知っているブエナは微笑む。
久しぶりに恋愛話となったのが運の尽き。ゼノンにあれこれ言われたことを私はぽつぽつと話したのだ。恥ずかしいったらない。
ただ―――ブエナのいう通り、私は考えなくてはならない。突っぱねるのは簡単だ。だが、そうはいかない。
「誰かを想うってのは、苦しいんだよ」
私は恋をしたことがあっただろうか。誰かを、例えば凄いとかかっこいいとか思ったことはある。けど、それは恋じゃない。憧れだろう。
大切に思うことが―――苦しいこともあるのは知っている。父が仕事に行くたびに寂しと不安でひりひりして、大切だとわかっていても酷いことを言ってしまったりもする。大好きなのに。
わかっている。
わかっている。
私は危険視されていたような人物で、しかも背中には傷痕が残ったまま。惨たらしい過去。それは消えない。消せない。それを知っても、彼は彼のままだった。どうして?何で?私は、こんななのに。
――――怖い。
誰かに好きだと言われるのが怖い。過去を知られて軽蔑されるのが怖い。守ると言われるのが怖い。大丈夫だと笑った父と重なるから。私を助けて死んだ父のように死んでしまうのではないかと思ってしまう。
彼はそんな弱くはない。けど私はどうしたらいいかわからないのだ。