とある神官の話
「エルドレイスさんを見てるとね、旦那を思い出すよ。いっつも私の前に来てさ」
ふふ、と笑うブエナに私は複雑だった。あんなストーカー予備が似てると?寂しげな雰囲気が飛散する。
もし私が辛くて泣きそうになって喚いたら、彼は傍にいそうな気がした。むしろ平然と「誰が泣かせたんですか!?」などと言いそうだ。
想像出来過ぎる。
複雑な私をよそに「でもさ」とブエナはいう。
「本当いい男だね。あんだけ好きだと堂々と言うだなんて、女の子たちが羨ましがるだろう?」
今日は泊まるんだろう?という声に私は返事をする。ブエナが子供達にお風呂入るように言いに行ったため、一人。
私自身、悲しいことに同い年の親しい友人がいない。ロマノフ局長のもとにいた神官は殆ど男性だった。同期として親しいレオドーラ・エーヴァルトくらいか。だが彼は女顔だが男性。恋愛話なんて出来るはずがない。
最初は、ただのからかいだと思った。
"能力持ち"で"魔術師"の力を持つ女神官が珍しいだとか、そんな適当な理由で近寄ってきたのだろうと思っていた。なのに、あの人は――――。
いつの間にか、私の中で比重が増していた。もとからいたはずの人達の中に、ゼノン・エルドレイスの名前が増えて。
ジャナヤの時だってそう。わざわざ危険なことに首を突っ込んで、私の過去を知っても変わらなくて。
そして―――好きだといってくれるまで、口説くだなんて言って。
嫌いでは、ない。
――――好き?
いや、だって、確かにかっこいいとは思うけど、いや、うん落ち着け私!
「シエナお姉ちゃん?顔―――真っ赤だよ?」
「な、なんでもないよ!」
呼びにきたカイムか不思議そうに首を傾げた。
* * *