とある神官の話
男がぐったりと意識を飛ばしたのを見て、まあどうにかなるかと苦笑。目が覚めた途端私を殺そうとするかもしれないが、などと考えると厄介な拾い物だった。
男を背負い道を急ぐ。男はよほど疲労しているらしく目を覚まさない。それもそうだろう。あれだけ怪我をしたのだから。傷口こそ塞がっているようだが、血液を摂取する必要があるだろう。
"術"のおかげでなんなく目的地についたのは幸いだった。
「――――で」
グラスに血液を錠剤にしたものをを溶かしている私を、一人の少年がじっと見ていた。短い黒髪があちこち跳ねているのは夜中に私が突然訪問したため、直す暇がなかったのだろう。
欠伸を噛み殺しながら、少年―――アークは明らんでいく空を見る。
「行きなり来たかと思ったら。誰ですかあの人」
「さあ」
「さあ、って……知り合いとかじゃないんですか」
「拾ったのだ」
「へぇ拾ったんで―――拾った!?」
急に大声を出すな、と言えばアークはぐっと言葉を飲み込む。大人じみた少年ではあるが、やはりまだ子供だ。
この少年の名はアレクシス・ラーヴィアといい、よく"アーク"と呼ばれている。
私が少し前、怪我をして動けなくなったことがあった。そのまま時間がたてば動けるようになるからとそのままでいた時、アークと出会い助けられたのだ。自分より身長の高い私に肩をかし、ベッドを貸し――――それからというものの、些か歳の離れた友人となった。
彼は私がヴァンパイアだろうが変人だろうが気にしない。なので私が連れてきた男を見ても深く聞いてはこなかったが……やはり気になるわけで。しかも拾った、などと犬や猫じゃあるまいにと漏らしている。
「まあいいけど……あの、いつも思うんだけど、その服ってどっから手に入れるんです?」
度々アークのもとを訪れるから、彼の家に着替えを置いてある。アークの亡き父親の服を借りることもあるのだが、今は自分のを着ている。
何かおかしいか?と聞けば、アークは「全部」という。
……全部?
「だって……黴生えたみたいな色のズボンと、どぎつい赤紫で黒のしましまシャツはどうかと思う」