とある神官の話
――――???年。
燃え盛る炎。生き物の焼ける臭い。残虐なそれをしたのは、闇術に手を染めた愚かな者たち。
要請があって私も参加したが、胸糞悪い。年齢関わらず人体で実験をしていた奴らは、もはやヒトではない。武装した神官の何人かは堪え切れず嘔吐していた。
それを誰が責められよう?
見るがいい。
打ち捨てられた建物を改造し、密かに実験を繰り返した結果。骨は山のように積み重なり、地下の牢には掻きむしったような傷が残っていた。柔肌に刃を突き入れ、切り刻み、えぐる。そうして実験をしているのだ。
何かを得るためには犠牲が出る。
それを仕方ないことだと、私は思いたくない。ぎりぎりまで考える。多くを救うために。出来れば犠牲を出さないように。
―――――断罪。
犠牲者が生き返ることはない。わかっている。
「セラ」
不意に声がして、目を通していた本から目を上げる。そこには髪を切り揃え、見違えるような男がいた。
「アークから手紙だ」
「ああ、ありがとう」
山中に立てられた家は、家というより小屋のような作りだ。さほど大きくはない。私はここが気に入っている。最初たまたま見つけた、朽ちかけた小屋を改造したのが始まりだが、まあまあ良い。
隠れ家としては最高かもしれない。
「どうかしたか」
「いや…残虐な事件が増えていると思ってな」