とある神官の話
「セラ!」
別れ際に、アークが私を呼び止めた。何事かと振り返ると、些か表情が硬い。
「実は少し、気になることが―――」
アークから聞いた話。
彼は神官でも、どちらかというと研究者側である。闇術が出回らぬように研究している中で、最近奇妙なことを感じるのだと。奇妙なこと――――アーク自身は予感、としか言わなかったが、私に不安を告げた。不安。不安か。
研究記録に些か怪しさを見えたこと。"上の連中"が何かしら動いているような気がすること。
術式の研究は、危険性がある。
あまりいいたくはないのですが。アークは言う。誰かが、良からぬ術式に手をつけているような気がする。あくまでも"気がする"、なのだが――――私にはアークの言葉を「まさか」と笑えなかった。むしろ私は、アークに気をつけろと言った。
私自身も、その杞憂が杞憂ではなくなっていることに気がつきはじめた。まずい。どうにかしなくては。
私は悩んだ。
悩みながら、探りはじめた。
そして―――――そう。
それは明らかになろうとしていた。
* * *
―――――???年。
いくつかの掃討戦が、捏造されていたことを知る。私は密かにずっと調べていた。何故捏造されていたのか。真実は何なのか。アガレスは「考えすぎだ」と言った。彼は信じている。いや、そうだ。まさか上の連中がするはずがない……そう思っているのだ。
アガレスだけじゃない。ほかの神官もそうだ。だから、疑問を持たない。
闇堕者だから、それらを取り締まる。敵だ。敵。そうして神官らは断罪していく。私は後悔していた。本当に、彼らは闇堕者で、裁く相手であったのか。わからない。ただ―――。