とある神官の話





「今年も色んなことがありそうですね」

「なんかハイネンみたいですよ?」




 そう言われて私にも笑み。
 色んなことが起こるなら、楽しいことがいい。

 列車は減速し、やがて停止する。微かに塩の匂いがした。



 ――――ヴァン・フルーレ。
 海に面した街である。


 私が調べていた、あのアレクシス・ラーヴィアがいた街だ。
 私も二人もヴァン・フルーレは初めてなので、地図を見る。駅から少し歩かねばならない。
 なにかに気がついたらしいランジットが顔を上げる。




「もしかして、枢機卿長からの命で聖都からいらっしゃった方ですか?」




 そこにいたのは武装した神官だった。

 頷いたランジットに、何故か神官の顔に緊張が走る。何かあったのか聞けば、神官が重々しく口を開く。それには「はあ!?」とランジットが大声を上げ、ゼノンに小突かれていた。

 勿論私も、固まる。
 近くにいた一般人がかすかに視線を向けてきたが、やがて興味を失い過ぎていく。



「ちょ、待てよ。襲撃ってなんだよ」

「貴方方の他にも数名いらっしゃいましたが、何者かに襲撃にあい負傷してるのです」




 私以外にもリシュター枢機卿長の命をうけて人物らが、私と同じように包みをヴァン・フルーレへ運ぶことになっていたそうだ。しかも複数人でどれが本命かわからないようにしていたらしい。
 そうして命を受けた神官が、何者かに襲撃され負傷したという。
 どうなっているのか固まる私をよそに「枢機卿長には?」とゼノンが聞けば神官は頷く。




「連絡を入れています。詳しい話は後にしましょう。先に移動を」



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