とある神官の話




 武装神官が「案内致します」と歩きはじめる。聞けば私が護衛とともに来ることが伝わっていたらしく、ランジットの顔に緊張感が漂う。
 神官であるが、ランジットはどちらかというと戦闘が多く、こうした護衛も多い。歩く前にゼノンが私たちに防御術をかけ、ヴァン・フルーレの街を歩いた。
 駅前を過ぎると、賑やかな出店なんかが見える。
 興味津々だが、それどころじゃないのが悲しい。そして毎回毎回こうして厄介なことになるのか。

 神官のいる建物は立派で敷地もかなり広い。彫刻と、柱。門にたつ武装神官らの間を通っていく。
 そうして通された部屋には、他の神官が慌ただしく行き交っていた。落ち着かないので更に奥の部屋へ向かい、扉が閉められる。




「リシュター枢機卿長からの命を受けたのは、七名です。そのうち三名の包みは本物であとは偽物となっています」




 ヴァン・フルーレで研究される予定の術式は三つに分け、運ぶために七名が選ばれた。その一人が私である。
 時期をずらし、私らがどうやらたどり着く最後だったらしいが、他の六名のうち四名が負傷ということになった。そして本物の一つが襲撃者の手に渡り行方不明だとなっている。
 三つで一つなので、一つではどうにもならない。何が目的なのか定かではないが既に本物である二つが狙われる可能性があった。

 しかも、だ。

 一つは既にヴァン・フルーレに届き、もう一つの本物が――――私が運んできた包みである。
 二つは既にこちらにある。残る一つの行方はどうなっているのか。慌ただしさを見るとまだ掴めていないようだ。




「とにかくご無事でなによりです。それから滞在中は、よろしくお願いいたします」




 ヴァン・フルーレに包みを届け終わったら――――とはいかないらしい。

 滞在ついでに私らも現地の神官に協力せよ、ということになったのである。


 寄宿舎の空き部屋に荷物を置いたあと、再びゼノンやランジットらと集まった私は、ああなんというか、と溜息。
 聖都から来たのは「しばらく滞在されたし」である。


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