とある神官の話






 バルニエルやノーリッシュブルグにもある神官たちがいる建物同様、ここヴァン・フルーレの建物も立派な作りである。

 そして、だ。

 この建物には地下があり、かなり広い。そして何やら怪しげなぶつぶつという言葉や、何かが沸騰するような音が聞こえ、何故か「あの変人がぁぁ!」という声がして立ち止まってしまう。




「ああ、気にしないで下さい。多分私がやっていた残骸の、あれです」

「被害者、でしょう」

「被害者って、何の?」




 聞きますか?とにやりと振り返ったエリオンに、ランジットが全力で首をふった。それもそうだろう。エリオンが何というか、亡霊じみた笑みを浮かべたからだ。

 地下は明るい、とはいえない。その通路は入り組んでいるようで、絶対私一人なら迷うな、と思った。
 逸れぬように進むと、異様な扉の前に止まる。
 触るとこう、何というか「粋だろう?」――――呪われているの間違いではないのか?
 扉には何故か"変人注意!"やら"近寄る際気をつけろ!"という貼紙がなされている。なにこれ。これ何。奇人変人?それから何この嫌な感じ。

 エリオンはその扉に触れて開けると「さあどうそ」と中に入れてくれた。




「ここならいいでしょう」




 私個人の研究室です、といった部屋は確かに研究室らしい姿だった。乱雑な本や巻物が転がっている。




「ここで術式や古文書などを解読したりしてるんですよ。――――リシュター枢機卿長からということでしたよね?」

「ええ」




 先程、ヴァン・フルーレの神官から聞いたそれを思い出す。七人が選ばれていたという話である。私がリシュター枢機卿長に頼まれた際に聞いてない話だった。
 何故そんな重要なことを枢機卿長は言わなかったのだろう。


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