とある神官の話
なら、と私は考える。
もしかして…"術式"や"能力持ち"の仕業ではないのか。
しかし防御術はかなり強力で、炎を放てたとしても強い反発を喰らう。発動者もただでは済まない。
ヴァン・フルーレの神官もそう踏んで調べていたらしい。
「―――やはり何者かに侵入された形跡がありました!我々は周囲を探ります」
どうやって侵入したのか。
しかしながら防御術を無理矢理にでも摺り抜け建物に侵入したらしい。
かなりの、相手だ。
ヴァン・フルーレの神官とて実力者はいる。だが、もし相手が指名手配犯などなら厄介だ。"能力持ち"であってもそう簡単にはいかない。
私がそう、リリエフやヤヒアと会ったように。
私も周囲を見回ると神官に告げ、建物を少し離れる。ヴァン・フルーレに来たばかりなので土地勘はまったくない。なので下手に離れることも出来ない。こんな状況で迷子になったら笑えないだろう。それだけは避けたい。
生み出した護身用の剣を手に、周囲を見ていく。
放火魔は現場に戻るとか聞いたことがあるが、そんな簡単に見つかるはずがない。それに――――わざわざ強力な反発を喰らうことをわかっていて、だ。
目的があったはずだ。
そう、目的が。
「――――動くな」
心臓の鼓動が早まる。
ぴたりと動きを止めた私は、真横から伸びた刃を感じた。
右手に握られた剣がゆらりと光を反射し冷たく輝く。
「―――何故お前がいる?」
「……?」
「お前、シエナ・フィンデルだろう。何故ヴァン・フルーレにいる!」