とある神官の話





 仕方ないな、と呟いたランジットは「お嬢ちゃん俺とデートしない?」ジョゼッタを誘う。ジョゼッタは小さく頷くと、ランジットの腕におさまる。あれ、ランジットさん?


 残されたのはいまだに支えたままでいるゼノン・エルドレイスだ。

 既に他の神官はそれぞれの仕事に付きはじめている中、私はそのまま外へ出る。眩しくて目を細くした。
 奥にランジットとジョゼッタがいて、何やら話していた。








「探して、いたんですか」

「ええ。遅くなり申し訳ありません」

「そんなことは」






 申し訳なさそうに言うゼノンに、こっちも申し訳なくなる。注意力散漫だったのだ。カイムも一人にしてしまうだなんて。神官とてどうなんだこれは。

 顔を上げると、ゼノンと目があった。柔らかく笑ったその顔に、こちらの頬に熱が集まる気がした。





「あ、の」




 今なら、いいや、今しか言えない気がする。後で言いに行くのも可笑しい。
 





「ありがとうございます。ゼノン、さん」


「!いえ」





 驚いた顔をしたゼノンに、私は逃げるようにジョゼッタのもとへ向かう。


 だからだろう。その後ろで顔を手の平で覆って「反則でしょう」と呟いていたゼノンを見たのは、近くにいた神官だけであった。







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