とある神官の話
枢機卿長が何かを神官に吹き込んだ、といいのも考えられる。私たちはいつだって後で動くことになる。考えられることは出きるだけ出した方がいい。
私もランジットも無言になる。
――――そんな時だ。 激しくドアがノックされたのは。
しかも「シュトルハウゼン枢機卿!こちらにいるんでしょう!」などという神官の声に私とランジットの視線がハイネンにそそがれる。この人何から逃げてきたんだ……。
ハイネンは扉に近づき「書類はもういりません」などといっている。
しかし神官も引き下がらない。
「貴方が片付けないのが悪いんでしょう!?」
「あーあー聞こえない」
「……子供か貴方は」
呆れた私はドア(鍵がかかっていたのは多分ハイネンがやったんだろう)を開ける。そこには自分とさほど歳の変わらない神官がこちらに軽く頭を下げたあと、キッとハイネンをみやった。
「ご報告があります――――ラッセル・ファムランから連絡がありました」
「それを早くいいなさい」
そんな、と神官は呟く姿に同情する。この人は自由人すぎるのだ。
ラッセルは現在、小さな村にいるしい。
ノーリッシュブルグを出発した彼は何者かに襲われたそうだ。ラッセル自身応戦したが負傷し、近くの村の人に助けて貰っている、ということだった。
そして「なんだって…?」というハイネンの声が続く。
「誰なんだ、あいつは …と?」
「ええ。そういいかけてその、切れてしまいまして。しかも折り返したらファムランさんは出ていったといいますし…」
「何かあった、とか?」
「それから、もう一人連絡が取れない方が」
神官はさらに深刻そうな顔になる。それに対してハイネンもまた同じく言葉をまった。
彼が連絡が取れないというのは―――アゼル・クロフォード。彼女もよく聖都を離れている人物だが……。
彼女自身は地方にいっていたらしいが、彼女もぱったりと消息をたっているとのこと。
一体何が起きているのだといるのだろう。
「何か、嫌な予感がする」
底知れぬ、何か――――そう、蠢く何かを感じながら、険しい表情のまま、私もハイネンもまた無言でたたずむ。
* * *