とある神官の話
――――見事、だった。
金色は、こちらを振り替える。フードを被っていたのを邪魔だと取り去る。
女、だった。
しかし身なりは酷いものだった。神官でも、戦闘用の動きやすいものだったがかなりくたびれ、またはぼろぼろだった。顔にもやや疲労の色が見えたが、アガレスよりはましであろう。
「アガレス・リッヒィンデル……何故こんなところに?いや、待て。今はそれより―――――お前に確かめたいことがある」
「……お前は」
何者だ?
いきなり姿を見せ、アガレスのことをわかっていても、幽鬼の方を先に潰した女。そして、アガレスを見つめる女は「アゼル・クロフォード」と名乗った。
「お前があんな事件を起こすきっかけは――――黒幕はアンゼルム・リシュターで間違いないのだな?あんな……くそったれな実験をして、組織化していた黒幕は」
「何故」
「私の可愛い可愛い後輩が、くそったれな実験の被害者なんでね。それで?あってるのか?」
迷った。だがアガレスは短く返事を返すと、アゼル・クロフォードは満足げに頷いた。
被害者、といったが…。
考えられるのは、やはりあの馬鹿…ハイネンだった。様々なヒントを与えたつもりではいたが、さすがだった。あのリシュターのことを知っていて、アガレスを殺そうとしないなら――――。
被害者というのは、あの子か?
酷い怪我だ、とアゼルは洩らしたがすかさずナイフを投げた。悲鳴。今度はどうやら魔物らしい。
アゼルが舌打ちをし臨戦しようと構えたが、それをまた新たな何かが登場した。
それは、猛火。
焼き付くす炎である。
それはかなりコントロールされ、かつ目的のもの意外を燃やすことはない。意思をもったように魔物だけを炎に包み込んでいく。
いきなりのそれに、アガレス・リッヒィンデル自身がついていかない。怪我のせいもあるのだろう。思考が鈍る。木々のなかに現れる赤や橙は鮮やかな紅葉を思わせた「遅い!」
鋭くそう言葉を発したアゼルに、魔物を焼き払ったであろう者が「無茶いうなよ」と疲れた顔をしていた。
見たことがあるような気がした。