とある神官の話





 それからまだ、連絡はない。
 長引いているのだろう。





「そんな暗い顔しても始まらないぞ」

「わかってるさ……」





 どうなってしまうのか。
 レスティは重苦しさで参ってしまいそうになる。
 会議は長引く。
 アンゼルム・リシュターが姿を消した同じ時刻、ゼノン・エルドレイスが何者かに術式を食らったという。彼とは世話になったことがある。何者かに、と名前ははっきりとわかっていないらしいが、"あの方"ではないのか。

 この事件の結末は、いったいどうなるのかわからない。見えない。

 下手したら、教皇も――――。





「レスティ」





 ヨハンが何個目かわからない菓子パンを手にしながら、「んな顔すんなよ」という。





「こっちはこっちで、やれることをやるしかないんだ―――誰かがまた襲撃するっつーなら、こっちは立ち向かうだけだ」




 

 力強くそういったヨハンが、弟であるレスティには少しばかり頼もしく見えた。
 
 そうだな、と頷いたレスティは残り少なくなった菓子パンに手を伸ばす。







  * * *




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