とある神官の話
懐かしい夢を見た。
夢を見るのは、眠りが浅いからだとかいうがどうだろう。私が目を覚ましたのはうたた寝からだった。
父が出てくる夢を見たあと、私はなんとも言えない気分になる。
あの笑顔も、私よりも大きな手も、すべてまぼろし。私だってそう。あれはただの過去だし、夢だからいろんなものが混ざっている。
過去はどうやっても、戻らない。
ゼノンが眠るベッドに半身を任せてうたた寝していため、体が固まっていた。ゆっくり起こして、腕を真上に伸ばす。やや傾ける。右左と伸ばす。ぽきぽきと音が鳴り、腕をおろす。溜め息。
そういえば、私が目を覚ましたらゼノンがいたということがあった。
今の状況の逆バージョン、という感じだ。ベッドには私、すぐ近くにはゼノン。目覚めたら私は勿論ぎょっとしたのを覚えている。きっと今、彼が目を覚ましたら驚くだろう。
ちらりと見る。
銀色の髪の毛は、どうしてこんなにさらさらつやつやなのだろうかと不思議に思う。
肌だってそうだ。女の子のようにすべすべしてそうだ。形の良い唇も柔らかそうだな……って、何言っているんだ!
「シエナー……?」
「!?、えっとこれはその」
眠るゼノンを真上から見つめて悶えていた私は何ともまあ、あれな姿だっただろう。
扉を開けたままの格好でランジットは固まっていた。
これはその、まずい。
顔に熱が集まる。
「お、お邪魔しましたー」
「違いますから!ランジットさん!」
「うお!?ちょ、ちょっと落ち着け」
扉を閉めようとしたランジットに、私は素早く足を差し込み手をかける。何故かランジットが「ひぃ!?」とのけぞったのは気にしない。廊下まで出た私らに外にいた武装神官が何事かとこちらを見た。
しかし、「今のはただその、見ていだけですから!」「わ、わかったからちょ、首しまってる!」という私とランジットのあれに危険性はないとして、なんというか生暖かい視線を受けた。
ここにいる武装神官はあの教皇直下であり、私らよりも年上だろう。
ゼノンの話――――つまり、私にストーカー予備軍等と呼ばれているのを知っているかもしれない。
大丈夫か?と控えめに聞かれたことに「お騒がせしました…すみません」と謝る。彼らは何もないならよかったと笑ってくれたけきてにまた、ああ変なところを見られたと恥じた。
ぜーはーいっているランジットと、まだ顔が熱い私は取り敢えず部屋に戻る。