とある神官の話
長引くのは、当たり前だ。
その会議で、ジャナヤに先遣隊が派遣されるということだった。何が起こったのかまずは知らなければ対策のしようがない。だが、そいつらが戻るかもわからない。向こうで何があったのか定かではない今、生きて帰れるというのも疑わしいだろう。
アゼルは不吉な予感のまま考える。
それだけならいい。
先遣隊が持ってきた情報次第で、武装神官らが入る。
それに――――「あの子が!」
「何故またあの子を――――すまない。お前らも抗った結果だろうに」
『すまない』
「謝るな。謝るなら使えない連中を潰せ」
『無茶いわないでくれ…』
ウェンドロウの時のメンバーが参加することらしいが、アゼルとラッセルはここにいる。ゼノンは使えないだろう。シエナを守れるのは、ランジット・ホーエンハイムと、あの変人となる。
ゼノンがいないのが、痛い。
早く術式を解除出来ればいいが、その術式はかなり入り組み、また古いものらしい。教皇が解除に着手するが、時間はかかる。
そんなものを使える人物といったら限られる。やはり……。
シエナを行かせるのは、前回と似たような裏の意味があるのだろう。
彼女には、重い過去がある。危険だといわれたことも。野放しにするよりいっそのこと死んでくれた方が、危険性が減る。確かにそうかもしれない。だが、そんなことを許すようなアゼルではない。
アゼルだけではなく、彼女を知るものならみながアゼルと同じだろう。
胸くそ悪い。
さあ、どうする。
アゼルは迷った。
「キース」
『なんだ』
「悪いが、私から連絡があったことは伏せていてくれないか。行方不明というほうが表に出てくるよりも動きやすい。いや、むしろ死んだ、とかでもいい」
何処に何が潜んでいるかわからない。リシュターが聖都から消えたとはいっても、協力者がいてはまた何かしらの手を打ってくるはずだ。
会議で決定された物事もまた、伝わっているかもしれない。
急に遮ったキースはアゼルの名前を呼んだ。アゼルは「何だ」と返す。
するとどうだろう。
キースが『心配、したんだからな』とぽつり。アゼルはというとなんだこいつは、と顔に熱が集まる感じがした。
「――――悪かったよ」
簡単にくたばるわけがないだろ、とアゼルは続ける。
簡単にくたばるか馬鹿。
しかし、あれだ。
誰かが自分のことを心配してくれるというのは嬉しいものだ。誰かが、自分を待っていてくれるということも、アゼルにとっては力となる。