とある神官の話




 ―――彼らの目的は何なのか。




 あれこれ問題ばかりだ。
 そうエリオンは思うものの、歴史的な研究はやはり好きなのだ。不謹慎だが、その点は己のモチベーションが上がる。

 エリオンは広げていた紙切れやらなにやらを丁寧に閉じてゆく。その途中派手に不必要な束をぶちまけたが気にしない。
 見ていた紙切れなどを専用の入れ物にいれていき、術をかける。もしエリオンに万が一があっても、自動的にこれらが処分されるようになっているのだ。
 悪用されるよりはマシであるし、ある程度ならばすでに頭に入っている。なので奪われてもその先でこれらは崩壊するようにもなっている。


 なぜそんなことをしているのか。
 それはもちろん、聖都に行くためだ


 エリオンはそれから、やや乱暴に荷物を鞄に詰めていく。彼が準備していたのは聖都に行くためであったのだ。お呼びだし、ということである。
 旅の準備をし、彼は地下から地上へ。地下に出ると神官らと顔を見合わせることになるのだが。







「聖都に行くってお前、ついにやらかしたのか!?」

「つかの間の平和!」

「片付けから解放される!」






 同僚と後輩が、エリオンが聖都に行くことを知っているため、そんなことをそれぞれがいっている。
 エリオン自身、気がつけば第二のハイネンなどと言われるようになり、かつこういうリアクション(?)をされるのには慣れているのだが、ちょっとばかり言ってやる。







「そんな名残惜しまなくとも」

「惜しんでないわ!」







 エリオンは笑って、建物を後にしようとした。それを同僚の一人がエリオン、と呼びとめる。
 なんだ?と荷物を持ったまま振り替えると、同僚は先ほどの冗談(半分は本気なような気がする)をいっていた顔とはうって変わっていた。真面目な顔。






「気をつけろよ」






 貴方たちも、と返したエリオンに奥から「お前もな!」と返ってきて、エリオンは口許を綻ばせたままヴァン・フルーレを後にした。





  * * *





 ―――ジャナヤへと先遣隊が向かった。



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