とある神官の話





「ヴァン・フルーレはどうなってる?」

「微妙ですよ。まあ、ヴァン・フルーレにいる神官は研究者が多いのであまり動じていませんがね」





 研究者の神官は、なんというか変わり者が多いと言われる。答えの見つからないような文献やらなにやらを日々研究し、それを見極め判断する――――それによってそれが今後使われるか、あるいは公開情報に出来るか、危険として封じ込めるか……などなど分かれていく。
 忍耐強さが求められるようなそれは、結構精神的にすり減るのではないか。

 駅から出て、宮殿へと向かいながらエリオンは続ける。






「ヒーセル枢機卿が陰りを見せているからか、そちら側寄りの神官はちょーっと肩身が狭い。ま、派閥なんてくそ食らえ、ですが」

「……そ、そうだな」

「それより――――問題は先輩、ですよ」






 嫌な予感がする、だなんていうから私は更に不安になる。
 複雑な術式を食らった、といっていたが……。そんなのどうやって食らったのか。誰から?目撃者がいないから、ゼノン本人の口から聞くしなかなった。

 それと同じく、あのアンゼルム・リシュターが姿を消した。
 やはり彼が?
 ジャナヤといい、アンゼルム・リシュターといい……。何故こうも問題ばかりなのだろう。神様は意地悪だ。神官の身でありながらこんなことをいうのは何とも微妙だが、そう思ってしまう。

 ――――知らないことばかり。
 
 父の知り合いかなにかだと思っていた男性があの、アガレス・リッヒィンデルだったり。実はウェンドロウが生きていたり……。本当に、どうしてこうも静かにさせてもらえないのか。
 今は頼りになる先輩アゼル・クロフォードも、ラッセル・ファムランも行方不明。
 そしてあのストーカー予備軍ゼノン・エルドレイス身動きがとれない。


 何が起こったのか?
 何が目的なのか?



 武装神官、ランジット、エリオンとともに宮殿内へ。
 宮殿内は何処か落ち着かない様子であるが「本当に久しぶりだー、宮殿にくるのも」というエリオンの声にちょっと脱力。  本当この人、あのハイネンに似てる。さすが第二のハイネンと言われる男だ。




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