とある神官の話
「ああ、来たか」
宮殿の一室、入り口には武装神官が待機していたそこ。
エリオンらとともに入室すると、ベッド付近に法衣。それから枢機卿衣が目に入る。
一人はエドゥアール二世、つまり教皇である。そしてもう一人、枢機卿衣姿なのは枢機卿になったばかりのヨウカハイネン・シュトルハウゼンである。
「ヴァン・フルーレから参りました。エリオン・バーソロミューです」
「ああ、ハイネンから聞いている。急にすまないな」
「いえ、勿体無いお言葉です」
それは、あのエリオンからは想像出来ない丁寧さだった。
エドゥアール二世は教皇である。フィストラ聖国のトップだ。"教皇"という名だが、いわば一国の王である。普通は、今のエリオンのような感じの対面だろう。
其れでも正式なものではないものの、私がエドゥアール二世に初めて会った時よりも緊張感のようなものがあった――――のだが。
「二人とも猫かぶりは上手いですねえ」
ああこの馬鹿。
うっかり暴言を心の中で言ってしまう。だって、だって、だ。
エドゥアール二世は「だろ?」と笑い、そしてそれを見ていたエリオンはハイネンに「当たり前です」といった。二人ともどや顔で、である。
いやいやいや、そういう問題?
たぶんだが、私がそう思ったのをランジットも思ったのではないだろうか。目があって、苦笑のようなものが互いからもれていた。
仕方ない。変人はえっと、そういうものなのだ。
回りが変人ばかりとなってしまった今、そういうのに私自身が慣れてしまっているという事実。
複雑、である。
そんな私をよそに、エリオンに「まず、貴方の意見を聞きましょう」と訃げた。
それにゼノンの傍に寄り、そのまま見つめる。何か確かめているのか。
すると手をかざして、小さく呟く。淡い光が生まれたが、さらにエリオンが手を近づけた途端、ぱっと弾かれてしまった。
「どうだ、解除にはどのくらいかかると見る?」
「そうですね―――、一日では無理でしょう」
「ええ。しかし急かなければならないんですよ」
「努力はしますよ」