とある神官の話
エリオンがハイネンらと合流した後。
私とランジット、武装神官はキース・ブランシェ枢機卿のもとへ向かった。
武装神官は入り口で、私たちは中へはいる。
ブランシェ枢機卿は大量の資料を見ていた。資料とはいったが、書類やファイルなども混ざっていて乱雑としている。
ランジットと私が戻ると「ご苦労」といい、続けて「暑かっただろう」とつけ加えた。
「もう夏だもんな。あっという間だぜ」
「そうだな……」
「そういや、フォンエルズ枢機卿はノーリッシュブルグに戻ったのか?」
「いや、まだいる。今はどこかほっつき歩いてるだろう」
その顔色の悪さは暑さのせいだけじゃなのか。
どうやらノーリッシュブルグの枢機卿ミスラ・フォンエルズは絶賛毒舌大魔王を発揮しているらしい。ただでさえ最近大人しいといわれるヒーセル枢機卿らがさらに口をつぐんでいるとか。
ジャナヤへ向かった先遣隊が情報を持って戻るまではいるだろう。
今のところ私は会っていないが、何処にいるのか。
あの方……ミスラ・フォンエルズは、私と同じ"能力持ち"であり、能力は"魔術師"。
魔術師の能力持ちはちょっと変わり者が多いのだろうか。自分もそうだし、父セラヴォルグもそうだ。そしてゼノンも。
そこで、はっとする。
変わり者、なのだろうか、私。
ちょっと落ち込む。
フォンエルズ枢機卿はノーリッシュブルグに普段いる。なら今ノーリッシュブルグはどうなっているのかというと、あのムブラスキ兄弟らがちゃんともたせているとか。だが早く戻ってきてくれ、というメッセージを預かっているのだ、とブランシェ枢機卿がいう。
「先遣隊が戻るまではいるだろうさ……私に仕事を押し付けながらな!」
ばさり、と端に置いてある書類がはらはらと落ちる。
あー、と頭をかくランジットが「お前、禿げるかもな」といえばぎろりと睨む視線。さすが友人だからか、ランジットは笑いながら書類を拾っていた。
「何と言ったと思う?"私は暑いのは苦手だからお前が頑張れ。後輩として"だ!」
さらに書類が落ちる。
ランジットが「あー、ユキトは夏苦手だろうからなー、頑張れ」と他人事のように反す。
だが、何かに気づいたらしい。
勢い良くブランシェ枢機卿のほうへ顔を向けると「お前まさか」という。ランジットの顔が信じたくないというような感じなのに何事かと思う。
「お前は確かにゼノンの相棒だが、私の部下でもあるな」
「あ…そ、やっぱりか!鬼畜!鬼!俺の休みはどうなる!?プリンとか!あれ限定なんだぞ!」
「知るか。文句があるならフォンエルズ枢機卿に言うがいい。言えたら、の話だがな」
「言えるか馬鹿」
えっと。
ランジットとよく話すようになってはいたが、新事実が発覚した。どうやら彼はプリン好き、らしい。
だーもー、と脱力するランジットと、もうやけくそだと言わんばかりのブランシェ枢機卿。
……、なんだこれ。