とある神官の話
「先輩」
あれこれと考えていたのを中断させたのは、エリオンの声だった。くせ毛の赤が目に入り「顔色がやばいですよ。歳ですか」とさらっといわれ、「誰が歳ですか」と返しておく。
しかし迫力はない。足元もふらついて、「おい」というそれに何でもないと気をとり直す。
しっかりしろ、ゼノン・エルドレイス。
ランジットの心配げなそれや、エリオンのなんとも言えぬ顔はここ最近ずっとなので気にしない。
うごいていれば、またはあれこれ考えていれば余計なことを思わなくてすむ。
「さっきハイネンさん宛に電話が来たみたい で、それっきりなんですよ」
「電話?聖都からか?」
「さぁ…。ですが長引いてますから、嫌な予感がするというか」
洒落にならない。
だが、もし聖都からならばそんな嫌な予感というのは当たるかもしれない。
なんだっていい。そうだ。
ゼノンは息を吐く。落ち着け、冷静でいろ。頭に血がのぼったままでは判断を誤る。それでは助けられるものも助けられなくなってしまう。
シエナの過去に何があろうが、生きたなんだろうが、シエナはシエナだ。ゼノンが惚れているのは、あのシエナなのだ。
例えこの想いが実らなくてもいい。
そう簡単に諦めるつもりはないが、彼女にもし大切な人ができて結ばれるというなら、身をひこう。彼女は、笑っているべきだ。彼女が幸せなら、それでいい。
――――ねぇ、シエナさん。
この問題が片付いたら………答えを、教えてはくれないだろうか。
「ともあれ、あとはそのハイネンがどういい始めるか、だな」
ランジットの言葉に、エリオンとゼノンはそれぞれ頷いた。