とある神官の話
「奴らには扱えないことと、本人の意思も関係するんだってな」
「……それは」
「アレクシス・ラーヴィアが言ってたらしい」
「どういうことだ…?」
レオドーラ自身、それは聞いた話でしかない。だが、ここは仕方ないとヴァン・フルーレでのことを簡単に説明した。
自分は残念ながら、あの場にはいなかったから見てはいない。なので"らしい"という人から聞いたという言い方なのだが、マノは「その通りだ」といった。そして何故かレオドーラを見て僅かに笑った。
何が面白いのかさっぱりだが、レオドーラはこれで何がなんでもマノにくっついていかなくてはならなくなった。
別にいい。
それで結果的にシエナに繋がるのなら。
レオドーラ自身、シエナが無事に戻ることが第一で、その他は上の連中がどうにかしてくれればよかった。シエナをこんなことに巻き込んだ黒幕らは許さないだろうが、無事ならそれでいい。それは多分、あのゼノン・エルドレイスだって同じだろう。
理由はわからないが、マノがシエナを助けるつもりならば、それに協力する。
―――そうだ。
先ほど幽鬼から見えたものついて、まだマノに話していない。
さっきの幽鬼だけどよ、とレオドーラは見えたものを話すとマノは不愉快そうな顔をした。それは心底嫌っている顔だ、と思う。
誰を?ヤヒアか?あるいは……。
「古い建物、か……」
そんなのいくらでもある。それだけじゃ手がかりとしては不足だ。
顎に手を添えて考えているマノを、レオドーラはただ見ているしか出来ない。
あれが本当ならば、シエナは今ヤヒアとアンゼルム・リシュターのもとにいるということだ。ヤヒアは指名手配されているからどのくらい危険かはわかる。だが、リシュターは全くわからない。だから、怖い。
周囲は木々ばかりで、鳥が過ぎていく。
こんな状況じゃなかったらただの山登りとか、ハイキングとかみたいだな、と思うような静かさだ。
回りを見ていたからか「レオドーラ」と呼ばれたそれに「お、おう」反応が少し遅れた。名前で呼ばれたからというのもある。
「ハイネンらは今何処だ?」
「俺が最後に知っている情報だと……ジャナヤだな。何もなければ聖都に戻ることになっている」
「―――例の、神官らが眠らされたというやつか。それで自分の目で見るために、といったところか」
「……多分な」
「成る程。あいつらしい。まあ、こうなってはそれが一番だろう」
もう、"何で知っている"だなんて口にはしない。
どうやらレオドーラが考えている以上に、マノは知っているらしい。言うだけ無駄だろう。
ハイネンらがジャナヤへ向かって、そのあとどうなっているのかレオドーラは知らない。なんたってバルニエル近郊の見回り最中に幽鬼と出くわし、さらわれたのだ。そのあとは正体不明のマノと会って今に至る。
ただわかるのは、あの鬼―――アーレンス・ロッシュが今ごろ物凄い顔でいるだろうことだ。思わず想像し、ふるそうになったそれに「どうした」とマノが目敏く聞いてくる。
何でもねぇよ、何でも……。
戻ったときが恐ろしい。