とある神官の話
「ジャナヤはこれといって何もないだろうな。ただの時間稼ぎに連中が使っただけで、本命とは思えない―――このくらいは考えているだろうが、問題はその次、か」
―――思えば、だ。
今まで散々人体実験だとか、邪魔物を消してきているのなら……こういってはあれだが、何故完全に殺さないのかと思うものがある。
ロッシュ兄弟のこともそうだし、ヴィーザル・イェルガンのこともそうだ。ヴィーザル・イェルガンなんてそれなりに情報を知っていたし、何よりアガレス・リッヒィンデルとの繋がりも見えるなら、奴らには邪魔でしかないはず。
なんというか、やろうと思えば消すことなど出来るだろうが、あと一歩というところで、と言う感じではないか。
もっとも、こちらだってそう簡単にはいそうですかと殺られるはずがないのだが。
邪魔だとかっているのに、完全に消し去らないのは何か理由があるからか?ヤヒアあたりなら気まぐれということもありえそうだが、それはあくまでもヤヒアだけだ。
それから、シエナが聖都に行く原因となったゼノン・エルドレイスだってそうだ。
何故わさわざ自分の姿を見せた?逃げるなら黙って逃げればいい。しかも能力持ちのゼノンは高位神官だ。"魔術師"の能力持ちはその万能さから手強いのはわかっている。ましてシエナ絡みだと余計だ。
なのに、よくわからない術をかけるだけだった。
邪魔ならば減らすべきではないのか。もはや正体を隠すつもりはなく動くならば、敵を減らそうとするものではないのか?
レオドーラがいくら考えても、本人じゃないからわからない。自分は凡人だから、非凡な連中のことなどさっぱり理解出来ないというのか。
「時間稼ぎ、ねぇ…」
向こうは確かに時間が必要だろう。身を隠す場所だとかを確保するにも時間や、足が必要だ。金だってかかる。
同じ場所に長く留まればそれだけ見つかる確率も上がる。
時間がないのは、レオドーラらだ。
どうすりゃいいんだよ。
レオドーラは日が傾きはじめている空を見ながら、焦っていた。
* * *
――――何を考えているのかさっぱりだった。