とある神官の話





 ―――――………。


 当時、セラヴォルグが聖都に滞在していた時だ。
 そんなとき、シエナとセラヴォルグが生活していた村が消えた。それと同時にシエナの姿も消えてしまうという事件が起こった。


 そのことをセラヴォルグは聖都で知る。


 村人は確認出来ただけでも全員が無惨な姿となっていた。
 しかしそのなかでシエナ・フィンデルの姿がない。シエナはセラヴォルグに救われる前のこともそうだが、珍しい能力持ちであるということから、一部が遠巻きにシエナが犯人ではないかといったのである。

 もちろん、セラヴォルグは激怒した。
 そして聖都を去る。



 アーレンス・ロッシュはそれをセラヴォルグ本人から連絡があり、知った。


 それからしばらくして、セラヴォルグからまた連絡がきた。
 それは今から助けにいく、というものであったのにアーレンスは必死に引き留めた。行くなということではない。一人でいくな、ということである。

 村を壊滅させるだけならば、そうするだけの力を持つ相手が待っているかも知れないのだ。
 いくらセラヴォルグが強くても、人数であったり守る対象がいれば苦戦するだろう。
 だから、一人でいくなといった。応援を呼んだ方がいいと。



 当時―――アガレス・リッヒィンデルが引き起こしたあの事件から数年。

 ヤヒアやリリエフなどといった連中の名前が上がり、指名手配になっていた。
 そんな中に、ウェンドロウという人物もまた指名手配されていた。

 それらの多くは残虐であり、人の命をもてあそぶような 者たちばかりだ。何者であるにしろ、一人で行くのはやはり危険であるとアーレンスは電話ごしに怒鳴ったが、彼は静かだった。そして冷静にアーレンスに"もしもの時"のことを確かめさせるように電話ごしに話した。
 そして場所と、神官の派遣をアーレンスに頼むと電話を切った。



 アーレンスは頭の固い連中に怒鳴りながら派遣を要請し、一人先にセラヴォルグがいっていた場所へ向かった。
 エドゥアール二世の待てというそれに背いたのは、嫌な予感があったからである。電話ごしのあれを、アーレンスは思い出していた。"もしもの時"。前にも話したそれをまた話すのは、それだけのことだということだ。
 ――――急がなくては。


 隠されるようにしてある建物。
 それなりに立派な建物はあちこち崩れ、そして炎が見えた。どうやったらこうなるのか。
 アーレンスは一人の人物を浮かべる。急がなくてはならない。
 
 ここまで出来るとしたら、セラヴォルグだろう。



 建物の中へいけば、切りかかってくる者。倒しながらアーレンスは破壊の音を聞いた。それは敵か味方か。

 その際、おぞましいものをいくつも見た。
 報告にある通りである。




 建物はあちこち崩れ、空さえ見えるくらいの中―――――見つけた。




 死にそうになりながらも高笑いをし、シエナへと何かを放つ男。

 それを庇う男。

 不釣り合いな刃を持った血まみれの少女。




 アーレンスは近づきたかったが、それをフード姿の連中らが許さなかった。

 目の前で光が炸裂し、視界を奪う。笑声と怒声。

 目が光に慣れ、再び視界を取り戻した時に見えたのは――――倒れた友人。そして刃を落としたシエナが膝を落としている光景だった。






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