とある神官の話





 銀髪に、女が騒ぐような美丈夫。しかもあの歳で高位神官であるというエリート街道まっしぐらな男、というのは見た目どある。

 控えめといったらそうだが、違う。
 シエナに関しては情熱的だ。

 レオドーラがしたら鳥肌が出そうなこともする。レオドーラだってやりたいと思わなくもないのだが……いや、やめておこう、シエナに「変なレオドーラ」といわれるのがおちだ。
 ああ、何だろう。
 なんか落ち込んでくる。



 自分はエリートじゃないし、顔といえば女みたいだし…じゃなくて。
 小さい頃からの知り合いというのが、向こうとの差であるし、それがレオドーラの行動を阻んでいたともいえる。

 つまり、だ。
 動いたもの勝ち、なのだ。
 
 レオドーラはバルニエルで、シエナの背中を見送ったことを思い出した。




「それで?あの子はどっちにくっつくんだ?」

「おい、それを俺に聞くのか」




 傷口に塩を塗りたくられた気分である。

 しかしここまでくると、もはや開き直ってくる。「多分向こうだろう」と返した。それにはいつぞやのファーラント・ロッシュとのやりとりが思い出されたが、無視した。
 マノだからこそずばり聞いてきたのだろうし、レオドーラもマノだからと諦めた。



「それでいいのか?」

「いい、というか……」



 困ったような、それでいて真面目に問うているそれにお前は俺の親か、と突っ込みたくなる。
 というか、いいわけねぇだろうが。




「俺は関係を壊して気まずくなるのを避けてた。けど、あいつはそんなの飛び越えてストーカー予備軍とか言われてもめげずにいて、支えてたし守ってた。シエナの過去も知っても動じなかったし。それに」

「それに?」

「いや……。シエナならもう、答えが出るだろ。なんつーか俺、ゼノンを見てるとあいつにならって思う。負けたとかじゃなくて、その……あーもー!よくわかんねぇけど、幸せならそれでいいんだ」




 そう。
 確かにレオドーラは、シエナのことが好きだ。だが、一番に願うのは彼女の幸せだ。

 何でこんな話をマノにしているのか。しかしファーラントのも同じようなことを話したが、これは本心だ。シエナが好きだが、そうじゃない。いや、何がそうじゃないのかときわれるとまた困るが、バルニエルでのシエナを見ていたら、わかった。




「もちろんあの野郎が泣かせたりしたらぶっとばすけどよ―――女の幸せを願うのも男だろ」



 かっこつけだ、とも思う。好きなら付き合いたい。抱き締めてやりたい。守ってやるのは自分だ。そんなことを思っているが、レオドーラはわかってしまっている。

 シエナの、答えを。
 シエナ自身がそれに気づいているのかまではわからないが、いずれ答えは出るだろうそれ。

 好きだったんだぜ、だなんて言わない。
 それはレオドーラの意地でもある。

 胸は痛むが、清々しさもあった。




「そうか」

「おうよ」



 一瞬、マノが切なそうな顔をしていた。気のせいかもしれない。
 
 彼は何も言わない。
 それが、もどかしい。






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