とある神官の話
「色々と策を練っておくことは勿論大切です。ですがはっきりいって、きりがない。向こうがどうなっていくら見当がつきませんからねぇ」
「そりゃそうだろうが…」
「逃げ道の用意はちゃんとしてますよ?」
「そういう問題か…?」
何がくるか、あるいは待っているかなんて、今時点ではわからない。とはいえ、無計画にいくの不味いだろう。
「前回、ジャナヤへと行った時よりも慎重にと私はいったのだか…」
「そうしても、やられるときはやらるれるんですよキース」
「…やられたらまずいだろーが」
菓子をもったままランジットが呆れ、胃痛なのか腹部あたりに手をむけるキース。
ハイネンのいっていることはわかる。やらるれるときはやられる。だが、ゼノンはただやられるだなんて真っ平だ。道連れくらいにはしてやる。
相手が相手だから慎重に行きたいというキースの気持ちはわかるし、ゼノンもある程度は必要であると考える。考えられることへの対策を考えておくべきだ。…必ず助けられるように。
しかしジャナヤの時には、能力持ちがゼノン以外にもいた。だが今回、ゼノン以外だとエリオンくらいだ。彼は研究者肌であるから、戦闘には不向きである。エリオンの能力は守護者、つまり守りに長ける。援護側の人物だ。
戦闘こそ不向きだが、戦闘には守る力も必要だろう。
「主戦力は私やゼノン、ランジットで。後衛としてキースやエリオン、といった感じになるでしょう」
「ほー、キースも参加か」
「何だランジット。文句があるのか」
「ねぇよ。むしろ頼りにしてる」
枢機卿という身分になれば、自分であれこれ出ていってう動くということは減る。しかしキースは何でもある程度は自分でやるし、足を運ぶことを知っている。それから鍛練もしているし、付き合うこともあるのだ。一緒に行く連中はみな、信頼出来る。
それに――。
"あの男"らも、あの地へ来る。
男が何者かはさておき、一緒にいるらしいレオドーラはシエナのことを想う一人だから、信頼できる。
となると気になるのはやはりレオドーラの側にいる男だ。
一体何者なのだろう?
気にはなるが、今のところどうすることもできない。会えばわかるだろう。
彼女は、いるのだろうか?
いる、たなんて言い切ることはできない。むしろいないという確率のほうが高い。確かめに行く、そんな程度だから。
だがそんな中、レオドーラたちも行くという。レオドーラたちは何故そこに行くのか。やはり何かあるから行くのだろう。偶然かもしれない。だが、そうではないかもしれない。
だとしても、必ず見つける。
連中など、どうってことはない。
「どうした?」
考え込んでいたら、キースに呼ばれてたのを聞き逃していたらしい。視線をむけて苦笑する。
「どーせ、シエナのこと考えてあれこれ妄想爆発させてたんだろ」
「あんなことやこんなことを?」
「あなたたちの中の私はどんな男なんですか」
「イケメンだけどちょっとずれてるストーカー一歩手前」
「奇人変人の一人。ただし少し普通寄り」
「よし、今なら涼しくしてあげられますよ?なんとタダで」
エリオンとランジットが逃げる。キースが呆れて「お前らなぁ」と溜め息。しかし口許は笑っていた。
精神的に余裕は、あまりない。だからこそ、今リラックスしなければもたない。
ゼノンもまた同じく口許を綻ばせていたが、やがて「必ず」という声に顔を向けた。
「助けましょう。シエナさんを」
そんなハイネンの言葉に、皆がそれぞれ頷いた。
もっとも――――そんな良い雰囲気を「あれ、何だか青春みたいですねぇ」などとハイネン自身がぶち壊したのだが。
* * *