とある神官の話
入れ代わるように出てきた長身、ランジットは片手をあげて笑う。そして、すれ違った女性たちをみて「あれって」と言う。
「あいつの……」
「ええ。ファンの人でしょうね。参ってしまいますよ全く」
ランジット・ホーエンハイム。赤い目を持つ神官の一人で、ゼノンの友人。ゼノン繋がりで知り合ったのだが、この人は変人じゃない。むしろ常識人だと私は思う。
彼は能力持ちではない神官である故に、武術に長ける。ゼノンの相棒だそうだ。
相棒と聞いて苦労しそうですね、と漏らしたら頷かれ、そこらから何だか親しくなったのだった「でさ、シエナさん」
「これはロマノフ局長やヒューズ副局長からの許可は得てることなんだけど」
「?」
「ちょっと付き合ってくれないか?」
「いいですけど。何処に?」
一瞬同じような台詞を言ってブエナの孤児院に私を連れていった(連行、とも思える)ゼノンを思い出した。いやまさか。