とある神官の話
「彼女の能力故かも知れん」
「………」
「私はよくわからんが、"魔術師"の力は脅威にもうつる」
「対策というわけですか」
「それもあるだろうな」
昔。
私と同じく、"魔術師"の力を持った神官がいた。かなりの実力者であったその神官は―――――。
苦い顔をしたままの友人に「彼女は」
「大丈夫でしょう」
確信してしまう何かだなんてものはない。キースは些か驚いた様子でこちらを見たが、再び前へ顔を向けた。
今頃、向かっているだろうか。
彼女の隣にランジットがいる。確かに気に入らないといえば気に入らない。だが―――彼だからよかった。彼以外の、自分の知らない奴だったら。
「お前も、程ほどにしておけよ」
「何が」
「何がって―――まあ、程ほどにってことだよ」
意味深な言葉をキースは言ったが、無視。
宮殿はすぐそこだった。
* * *