とある神官の話








 男の姿が消えた。背後に迫った者達の顔に恐怖。一人消え、また一人。



 有名になったものだ、と溜息まじりに逃げる背中へナイフを投げてやる。命中!「ぎゃっ」という声がした。そして側に降り立つ。


 砂のように消えたそれは、洋服のみを遺すのだ。






「ならば我等は月に愛されたとでもいうのか」






 男の声は悲しげに、真夜中の闇へと沈んでいく――――。







  * * *





< 85 / 796 >

この作品をシェア

pagetop