とある神官の話







 幸い、死亡したという人はいないものの、被害者が出ている。夜、飲み屋からの帰り道で襲われた者、風俗関係者……。地べたに転がったまま目が覚めると血だらけだなんて笑えない。


 吸血といえば、やはりヴァンパイアの線だろうか。
 そう言うと「かもなあ」と返ってくる。




 ――――ヴァンパイア。

 昔はよく迫害されたり、異端だと言われ殺害されることもあった。が、今はいたって普通に見かける種族である。
 血液を摂取しなくては生きられないゆえに、輸血のための建物、あるいは病院内に施設がある。
 人への直接吸血は禁止されているのだ。

 ヴァンパイアならば、"はいずり回る"だなんてどうもしっくりこない。例えなのだろうか。







「ローブか何かを着ていたとすれば……あれだ。吸血された人が地面に転がり、屈んだ体勢がそう見えたのか」

「……」

「ん? どうした」






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