この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜



 「あの、勝手にあがり込んで、大変失礼いたしました。
 ご用もないようですので、私 帰りますね。どうもお邪魔いたしました」



 私はこちらを見もしない利勝さまに頭を下げた。



 ………本当はせっかく来たのだから、くら子さまとさき子さまにご挨拶してから帰りたいけど。



 でもこんな不作法な姿を見られて、我が家の品格を疑われても困るし、静かなのはおふたりともお出かけしているからなのかもしれないし。



 心の中でひとり言い訳しながら、利勝さまに背を向けて帰ろうとする。

 すると、



 「……昨夜」



 ボソリと低く、利勝さまの声。

 私は振り向く。

 利勝さまはお顔をそらしたままだった。
 こちらに背を向け、声だけを寄越してくる。



 「昨夜父上が、江戸からお戻りになられた」



 お顔は向けてくださらないけれど、話しかけてくれたので、ホッとして私は答えた。



 「そうですか!それはよろしゅうございました!
 それで雄介さまは、いつお戻りになられるのですか?」



 利勝さまは振り返らない。

 私に背を向けたまま、低く言葉を落とした。





 「………兄上は戻ってこない。兄上は、死んだんだ………」





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