この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜



 それから………利勝さま。
 どうか 無茶だけはなさいませんように。


 怒ったお顔でもいい。不機嫌なお顔でもいい。


 どんな表情でもいいから、利勝さまのお顔を見せて。


 早くあなたに 会いたい。


 閉じているまぶたの裏に、利勝さまのお姿が浮かぶ。

 私に向けるお顔は、いつも決まって不機嫌だけど。


 でも あなたの瞳を見つめるだけで。
 あなたと言葉を交わせるだけで。


 ただそれだけで、心に熱が灯るの……。


 会いたい――――。


 ひとつ息をついて、まぶたを開く。


 お社を見つめたまま、しばらく手を合わせて立ちつくしていると、少し離れたとなりに、やはりお諏方さまに参拝にきたご婦人がいた。

 同じように手を合わせて、ご婦人はつぶやく。



 「どうか悌次郎が、無事に帰ってきますように……」



 つぶやかれたその言葉に、思わず私は振り向いた。


 この人は……もしかして。



< 265 / 466 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop