この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 


探している私の手が兄さま背中に触れると、その身体が一瞬ピクリと反応する。



すると兄さまはゆっくりと仰向けになり、天井を見上げて呆れたようにつぶやいた。



「まったく お前は……。いつまで経っても子供だな。とんだ甘ったれだ」



そうして手探りしていた私の手を、ギュッと握ってくれる。



嬉しくて、私は微笑んだ。



「はい!私は兄さまに、たっぷり甘やかされて育ちましたから」


「馬鹿もの、俺のせいばかりにするな。
父上も継母上も、まつだって。みんなお前を甘やかしていたぞ」



兄さまの不服げな声。でも私は気にしない。

たとえどんな時でも、兄さまは私のわがままを聞いて下さるとわかっているから。



「はい!ですから私は、たいそうな幸せ者です」



幸せを感じていた。



利勝さまも兄さまも、ご無事で戻られたから。



私の手を握ってくれる兄さまの手は、ごつごつとしていて、利勝さまと同じ。



固いけど あたたかい。



この手に握られてると、まるで利勝さまと手をつないでいるみたい。







遠く諏方神社からは、お囃子の太鼓や笛の音がにぎやかに響いてくる。



幸せな気分に包まれて、いつしか不安は溶けてなくなっていた。



そして 眠れぬ日々が続いていたせいか、私はそのまま、ほどなく眠りについた。




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