この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜



 あたたかな手のぬくもりに、心が溶けてゆく。


 さっきまで、それでもまだ信じられないとどこかで思っていた私。


 けど、このぬくもりは嘘じゃない。



 ………ね?利勝さま。



 この手を通して、私の想いがあなたに流れこんでしまえばいいのに。


 私の想いと、利勝さまの想い。
 混ざり合って、同じになれたらいいのに。


 そしたら私と同じくらい、利勝さまも私のことを好きになってくれますか?


 そんな願いを込めて、つないだ手をキュッと握ってみる。

     
    『好きです』。


 そしたらもっと強い力で、ギュッと握り返してくれた。


    『わかってる』。


 ―――そう おっしゃってくれたように。




 ………ほらね?利勝さま。

 何もしてやれないなんて、そんなの嘘。

 だってこうして、私の想いに精一杯応えようとしてくれる。


 言葉はなくとも、利勝さまの優しさを感じる。



 ………ね?利勝さま。

 あなたがそばにいてくださるのなら、私はいつも笑顔になれるんですよ?





 暗い夜道を、手をつないだまま ふたりで歩く。

 私の半歩左前をゆく利勝さまは、気恥ずかしいのか、一切こちらを振り返ろうとしない。


 そんなあなたが愛おしい。


 道端のそこかしこから、涼やかで心地よい虫の音が、私達をそっと包む。

 前を照らす提灯の明かりは、まるで利勝さまの手のよう。

 いつだって私を導いてくれる あたたかな光り。



 ――――このまま、時が止まってしまえばいいのに。

 明日なんかもう来なければいいのに。


 ずっとこのままで。
 ずっとそばにいてほしい。


 けれどそれは、けして言葉にしてはならない想い。


 だって それを望んだら。
 利勝さまの願いは叶わない。


 だから いいの。もう 大丈夫。

 たとえこの恋が 儚い夢で終わったとしても。

 きっと 悔やんだりしない。



< 304 / 466 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop