この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
潰走
まだ所どころに漂う霧に身を隠すようにして、俺達は味方の陣を目指し、道なき道を進んでゆく。
雨はいつのまにか止んでいた。
銃声や怒号が遠のいた場所まで来ると、熊笹に囲まれた少し開けたところで、先に後退した隊士達が後続の仲間を待っていた。
俺達の後ろにも何人かがついて来ていたが、集まった人数は二十人にも満たなかった。
この混乱と霧の中で、隊を見失ったか。
あるいは………。
考えたくないという思いは、皆 同じだった。
一同の表情が曇る。
それに集まった者の中に山内小隊長どころか、将校の姿がひとりも見当たらない。
一同は悩んだ。これから どうすればいいのか。
隊士達は皆 弱っていた。傷を負っている者もいる。
そうでなくとも、昨夜の風雨で身体の熱を奪われたうえに、ほとんど一睡も出来ず、食事もとらずでかなり疲労が見えていた。
だからなおさら、深手を負っている和助はつらそうに見えた。
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