この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜



 「母上!」



 さき子さまが戻ってきた。

 後ろから初老の男性が、小さな荷車を引いて続いてくる。その身なりから、くら子さまのお宅の下男だと思った。


 くら子さまは私の顔を見て柔らかく微笑むと、すっくと立ち上がる。
 そして駆け寄ってくるふたりに声をかけた。



 「ありがとう、さき子。末吉も。忙しいところをすまなかったわね」



 「いいえ、奥様」と、末吉さんは首を振ってから私にペコリと頭を下げる。

 私もペコンとお辞儀を返す。



 「この子を屋敷まで運びたいの。末吉、荷車に乗せてあげて」



 そうおっしゃるくら子さまに、私はあわててかぶりを振った。



 「いいえ!大丈夫です!履物だけお貸ししてもらえれば十分ですから!」



 そう言うけれど、くら子さまはムッと顔をしかめただけ。



 「放っておけば、今よりひどくなりますよ!
 足を大事になさいと、先ほど申したばかりでしょう!」



 厳しい口調に、思わず閉口してしまう。

 さき子さまが私のとなりに座りこみ、いたずらっぽく笑うとそっと耳打ちした。



 「おとなしく従ったほうがいいわよ。うちでは誰も母上に逆らえないの」


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