この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜



 声に振り返ると、廊下からくら子さまがお茶の盆を、さき子さまがお菓子の盆を、それぞれ手にして歩いてくるところだった。



 「申し訳ございません。手当てしてもらったうえに、お茶までいただいて」


 「あなた、まだ幼いのに遠慮しすぎよ?子供は遠慮しちゃダメ。甘えられるところは、ちゃんと甘えなきゃ!」



 と、そうおっしゃったのは、娘のさき子さま。
 年は十二歳だという。

 大人ぶったさき子さまの発言に、くら子さまは苦笑しながら言葉を継いだ。



 「さき子の申す通りよ。遠慮はしないで」



 やんわりとおっしゃいながら、私の脇にお茶を置いてくれる。


 ……優しい人たち。



 「いただきます」



 私は、はにかんだ。


 さき子さまが私のとなりに座って、お菓子をすすめてくれる。



 「このお饅頭、すごく美味しいのよ。食べてみて!」

 「あっ……はい!」



 すすめられるまま口にする。
 ほんのりと甘い、薄皮饅頭だった。


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