この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜



 兄さまは今度は利勝さまに向き直ると、軽く頭を下げた。



 「迷惑をかけたな。あの件はもう済んだと、妹にもちゃんと言い聞かせたつもりだったんだが」



 謝られた利勝さまは、腕組みして再度ため息を漏らす。



 「まったくだぜ。でも以外だったな。いつも冷静なお前が、妹のことでこんなに取り乱すなんてさ」



 言われて兄さまは、しかめた顔を赤くする。



 「見た通りの妹だからな。兄は苦労するんだ」

 「ああ。まるで糸の切れた凧みたいだ」



 利勝さまは横目で私を見ると、少し頬を緩め鼻で笑った。



 (………あ。笑った………)



 初めて見る、利勝さまの笑顔。


 利勝さまの笑顔なんて、まったく想像できなかったけれど。



 そうなんだ。



 利勝さまはこんなふうに笑われるんだ………。



 「母上!用事は済んだようなので、私は出かけてきます!」



 私から解放された利勝さまは、くら子さまにそう告げると、せいせいしたように両腕を伸ばして門を出た。



 兄さまも私を促す。



 「俺達も行こう。足は大丈夫か?」

 「はい」



 いくらか冷静さを取り戻したのか、兄さまは私の足を気づかってくれる。

 私達はそろって、くら子さまに再度深々と頭を下げると、利勝さまに続き門を出た。


< 76 / 466 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop