青色キャンバス


「…何?先輩、照れて……先輩?」

「…あ……」


嬉しくてか、悲しくてか。頬に涙が伝った。


言葉が重なった瞬間、蛍ちゃんが私に言ったような錯覚にとらわれたからだ。



「…先輩…」


秋君は私の涙を服の袖で優しく拭う。


私…
また泣いてる……


今までは我慢出来た。
蛍ちゃんと同じ髪色、蛍ちゃんの使ってた香水…

似たような背格好の人を見つけては蛍ちゃんじゃないかって期待して裏切られて…


それでも泣かなかった。
ううん、泣け泣かなかった。


信じたくなかったから…
今もまだ信じられない。


また「雛」って私を呼んでくれる。そんな期待を持ち続けて…


「先輩、まだ時間あるから外行こうか」


秋君は人の目から隠すように私の肩を抱き寄せた。


「…ごめ…」

「謝ったらキスするよ?」


秋君はわざとふざけてみせる。


秋君……


私は何度秋君に助けられたんだろう。


出会ったばっかりなのに、もうずっと一緒にいたような感じがする…



「ここ、広場があるんだよ」


秋君は私を人込みから庇うように少し前を歩く。
手は繋いだままだ。










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