青色キャンバス


「はい、着いた」


秋君に連れられて来たのは日当たりの良い大きな広場。


周りにはクレープ屋さんやホットドック屋さんもある。


私達はベンチではなく芝生に腰を下ろす。


まだ4月。
風は冬の余韻を引きずっているのか、少し冷たい。


「何?寒い?」

「へ??」


またまた何でわかったんだろう??


驚いていると秋君は私の手を指差す。


「…あ……」


視線を向けると無意識のうちに腕をさすっていた。


「ならこうしててあげる…」

「っ…」


秋君は私の手を握る。


恥ずかしさと手の温もりで体が温まっていくのを感じる。


「効果あったみたいだね。顔……赤いよ?」

「わ、わざわざ言わなくても…」


いいのに……


男の人に触られるのは怖い。でも秋君は……


違う意味で怖い。


触られただけで熱くなって、距離が近づくだけで胸が苦しくて…


それと同時に安心する。
秋君の傍にいる間は蛍ちゃんを忘れられた。




だからこそ……
その居心地の良さに依存してしまいそうになる。



そしてまた失ったら…?


そう考えるだけで怖くて怖くて壊れてしまいそう…








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