青色キャンバス


「…だって、先輩にドキドキして欲しいから」

「へ……?」

「嫌な事も全部忘れられるくらい俺だけでいっぱいにしたい…って言ったら?」


まただ……
秋君の口調も笑みもふざけているようなのに…


その瞳は真剣なんだ。


「あ…秋君……?」


冗談だって言って。
私にこれ以上心を許させないで…


離れるだけならいい、でも失うのはもう嫌。


だったら深く関わらなければいい。


そう思ってたのに…


どうして秋君はこんなにも簡単に私の決意を壊してしまうんだろう…


「先輩、お腹空かない?」

「あ、え??」


唐突な質問に一瞬思考が停止する。


確かにお腹、空いたかも…

「腹が減ろうが先輩の為なら全力で食べ物を調達してくるよ」


秋君はまた冗談を言いながら立ち上がる。


「あ……」


隣が急に寒くなった。
前より風の冷たさを感じる。


秋君の手が離れたから…?



「先輩?」


秋君は不思議そうに私を見つめる。


私…
今寂しいって思ってる…?


「すぐに帰ってくるよ」


秋君は私の頭を優しく撫でて走っていく。







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