重なる身体と歪んだ恋情
結局、タクシーを何とか捕まえることが出来て家に帰ることも出来た。
「お帰りなさいませ」
弥生の声に「ただいま」と答えて家の中に。
タイを緩めて、
「奏様」
弥生に呼び止められた。
「なんですか?」
もう疲れてるんだ。これ以上はカンベンして欲しい。
そんな感情が顔に表れていたのかもしれない。
弥生は私から視線を逸らし小さく息を吐き出した。
「シャツに赤いものが……」
その声に自分のシャツを見てもそんなものは見当たらない。すると、
「襟元です」
如月の声が聞こえた。
「お帰りなさいませ、奏様」
呆れるような如月の顔。ともすればため息だって付きそうなほど。
あぁ、私のほうこそため息を付きたい。
「奏様、どちらにお寄りになっても構いませんがそういったものを」
「分かってる。私は付けるなと言ったんだ」
「そう言う問題では」
「どこに寄ってもいいと言ったのはお前だろう?」
如月から逃げるよう部屋に行こうとするのに、
「言葉の綾です!」
如月も同じように私の後ろを歩いて。
「家に帰ってきただけ褒めてもらいたいな」
「奏様っ!」
「五月蝿いよ、司」
思わず如月を昔のように『司』と呼んでしまった。