重なる身体と歪んだ恋情
次の日の朝、朝食の席に着く。

彼女はいつも私より少し遅れて向かいの席に。

決して私と目を合わせることなく「おはようございます」と言う。

だから私も、


「おはようございます」


と笑顔で返す。


「好みのものが見つかりましたか?」

「え?」

「買い物、行かれたのでしょう?」

「あ、……はい」


弾まない会話。

冷めていくスープ。

これで満足か?

そんな思いを込めて司を見たのに、司は涼しい顔で彼女に紅茶を淹れる。

そして私には弥生がコーヒーを。

苦いこの味に慣れたのはいつの頃からなのか。

もうそんなことも思い出せない。


「それでは行ってきます」


そういえば、彼女は慌てて立ち上がりナフキンで口元拭う。


「いいですよ、ゆっくりと召し上がってください」

「……行ってらっしゃいませ」


その場で頭を下げ小さな声を私に届ける。

息苦しい。


こんなはずじゃ、なかったのにな――。

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