重なる身体と歪んだ恋情

ワルツが、始まる。

彼の手に引かれて揺れる私の身体。

こういうのは慣れているんだと思う。

彼のリードは強引でもなく、だからって弱くも無く心地よい。

動きやすいように導いて、私の足が勝手に動く。

1,2,3、1,2,3……。

父様と踊ったときは全然出来なくて私は足を父の甲に乗せていた。

『千紗はダンスが上手だね』

なんて。

私は父様にくっついてるだけ。

だけど私はそうしてワルツのダンスを覚えた。

いつもは着物だけどダンスを踊るときだけはドレスを着せてもらって。

揺れるドレスの裾が揺れるのを感じるのが好きだった。


「――あっ」


私の靴の下、違和感を感じてみれば彼の足を踏んでて。


「ごっ、ごめんなさ」

「黙って」


冷たい声。


「気付かないフリをして続けて」


そして言われるまま踊り続ける。

きっと、彼は私に呆れてることだろう。

英語も出来なければダンスもまともに踊れない。

私を妻にしたことすら後悔してるかもしれない。

そんなことを考えていると顔を上げることも出来なくて。

それからは足元ばかり気にしてワルツのステップを踏んでいた。
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