重なる身体と歪んだ恋情
車は桐生家に。

出かけるときに差し出された手は帰るときにはない。

彼はただ私の前を歩いて、


「弥生、今日は疲れたので休みます。ワインを部屋に運んで置いてください」


そう弥生に告げると私を振り返ることなく階段を上がってしまった。


「お帰りなさいませ。お風呂はいかがなさいますか?」


そんな彼の態度を気にかけることなくそう口にしたのは小雪で。


「……いいわ。私も今日は休みます」


とてもお風呂になんて入る気にもなれなくて彼の部屋のドアが閉まる音を聞いて階段を上った。

向かいにある彼の部屋のドアを伺ったけれど開く気配は無く、なんの音も聞こえない。

だから私も自分の部屋のドアを開けてそのままベッドに倒れこんだ。

確かに軽率だったとは思う。

だけど大野先生は先生で……。



恋心が無いわけじゃない。


でもこれは多分憧れの一種なんだと思う。

だから、


もう一度会いたい。


そう思ってしまうんだと思う。
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